　埼玉県の三分の一の広さを有する秩父の山岳地方に、大小さまざまなお祭りや行事が四百もあるといわれている。東京から百キロに満たない距離だが、盆地という地形が文化の吹き溜まりのひとつの現われなのだろうか。お祭りが根っから好きで「好きなものは好き、理由などいらない」という人が多いことも事実。そこには住んでいる者の生活が見え、信仰にこと寄せてともにする飲食、共同作業など交流やふれ合いの持つ楽しさは、いつになってもいい。これらの秩父地方に伝わる祭りと行事を三十年にわたって記録し、撮影した本書は1997年に発行された。第一回日本自費出版文化賞部門別で第一位の受賞に輝く力作である。まつりの数257ｶ所、撮影日入り写真572枚、所在地や土地の背景まで伺える解説入り民俗資料であるが、写真集として眺めても又楽しい一冊である。